連載「公共を創る」第55回

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第55回「日本は大転換期―満足しても現れる問題」が、発行されました。
成熟社会日本の問題。前回までで、豊かさや自由といった憧れが実現すると、成長の低下、目標の分散、孤独、責任などを生んだことを指摘しました。
今回は、満足したことによる問題や、経済的豊かさを追求したことによる問題などを取り上げます。

世論調査では、多くの人が生活に満足し、9割が中流だと答えています。それは結構なことですが、「上」を目指すことなく、「中」で満足しているとも言えます。
また、満足したことで、現実を見ることがおろそかになったようです。社会全体としては豊かになったのですが、貧困に悩む人はいなくなっていません。それどころか、豊かさの陰で経済格差は広がっていました。
満足は、現実にある問題を覆い隠し、またさらなる挑戦を忘れさせるという副作用がありました。
そして、他人と同じことさえしておれば、うまく行くという、依存心をも広げました。
社会の課題に取り組まない、公共の問題に取り組まないという、社会参加意識と政治参加意識の低下も招きました。