「移民と日本社会」

永吉希久子著『移民と日本社会』(2020年、中公新書)を読みました。
日本で定住外国人が増えています。日本は、移民(受け入れ)政策はとらないとしていますが、外国人留学生や労働者は増えています。昨年、出入国在留管理庁ができました。
地域での定住外国人の受け入れについては、1990年代から問題が起き、自治体では対応に迫られました。それらを伝える報道も多くあります。麻生内閣では、内閣府定住外国人施策推進室」を設置(平成21年1月)しました。

この本は、現場からの事例の報告ではなく、これまでの調査研究に基づき、数値で迫ります。
移民には、どのような種類があるか。移民による経済的影響(賃金や失業率、技術革新への影響、社会保障制度)、社会的影響(犯罪や治安)。移民の統合政策の違い、長期的影響(移民二世、国民のまとまり)などです。
外国人による犯罪など、一般に流布している噂と、実際は異なることが示されます。
自治体で定住外国人受け入れに当たっている職員や、関心ある方にお勧めします。

移民政策を採っていないこと、しかし現実にはなし崩し的に定住外国人が増えていること。これも一つの政策ですが、一貫した対応を遅らせています。部分部分での対応が、無理を生んでいます。
さらに人数が増え、地域社会での受け入れが問題になると、国民により認識されると思います。外国人家族の地域への受け入れ、特に子供たちの教育と就業が大きな課題です。

NHKのウエッブサイトには、「外国人材」の欄があります。そこでは、NHKの世論調査で、日本で働く外国人が増えることに「賛成」する人は70%に上ること。一方で、自分が住む地域に外国人が増えることに「賛成」する人は57%であること。
外国人労働者が家族を伴って日本で暮らすことについて条件を緩和して今より広く認めるべきだと思う人が30%余りいる一方、今以上に認めるべきではないと思う人が60%を占めることが報告されています。