個人消費拡大のために

3月20日の日経新聞オピニオン欄、門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの「個人消費の弱さをどう見るか」から。
・・・個人消費が弱い。最近の消費税率引き上げや新型コロナウイルスの影響のことだけを言っているのではない。アベノミクスの7年間を通じて、個人消費は0.4%しか増えていない。同じ期間に設備投資は15.5%増加して景気の拡大を支えてきた。7年間の実質国内総生産(GDP)成長率が平均0.9%にとどまり、アベノミクスが目指す2%の半分にも満たなかったのは、ひとえに個人消費がゼロ成長だったためである・・・

・・・もう一つの考え方は、財政や社会保障の持続可能性のためにも、より高い成長を目指すというものだ。アベノミクスもこの考えでやってきたが、個人消費がゼロ成長ではどうにもならない。イノベーション(技術革新)の促進や規制改革も重要だが、もっと家計重視型の成長戦略を進める必要がある。個人の所得形成力を強化し、将来不安を軽減するため、大胆な財源の拡充や組み換えが求められる。
例えば介護、保育、教育などは、所得形成や暮らしの安心につながる重要な社会インフラだが、長年にわたり現場の疲弊が続いている。こうした外部効果の高いサービスは、公的支援の一段の増強なくして、社会的に望ましい量や質は確保できない。

また人生100年時代に向かい、人工知能(AI)などの技術革新も進む中、リカレント(学び直し)教育も社会インフラと位置づけるべきである。いかなる年齢、バックグラウンド、経済状況の人にも、第二、第三のキャリア形成への道が広く開かれているという安心感こそ、不確実な時代の家計行動を支える基盤となる。国も取り組みを進めてはいるが、熱量や財政的支援は足りているだろうか・・・