台風被害、復旧の難しさ

風による大きな被害をもたらした台風15号に続き、台風19号が、各地に大雨による大きな被害をもたらしました。気象庁が、狩野川台風以来と予告した通りになってしまいました。被害に遭われた方に、お見舞い申し上げます。
被災者を救助し、避難所に入ってもらい、生活の支援をします。次に、復旧の段階に入ります。被災者にとっても、自治体にとっても、大変なことです。

ところで、私の経験では、一般の方、自治体の職員、報道関係者が、意外と気づかない「課題」があります。それは、大きく報道されることと、被災者にとって重要な課題が、ズレていることがあるのです。
道路や堤防などの公共施設は、国土交通省や自治体の土木部が経験と能力を持っています。農業被害の把握も、農水省と農政部が取り組んでくれます。それも大変なのですが。

課題は、つぎのようなものです。
・各家庭への支援。どのような支援策があるかの相談や、何に悩んでいるかの聞き取り。これは、最近までは家庭のことは「自己責任」とされ、自治体の業務ではありませんでした。しかし、公共施設の復旧も重要ですが、住民の生活再建の方がより重要なのです。
・がれきの片付け。分別しておかないと、後の作業が大変です。これについては、環境省が経験を積みました。
・ボランティアの受け入れと、配置。これも、近年経験を積み重ねてきましたが、多くの自治体と社会福祉協議会にとっては、初めてのことです。
・そして、これらの対応に当たる市町村役場への職員の応援です。

なぜ、これらの項目を、ここで挙げるのか。それは、
・これまで、各家庭の責任と町内での助け合いで対応していたことが、行政の責任になったからです。
・道路や農地は、県庁にも市町村役場にも担当部局があります。しかし、ここに上げた項目は、担当部局がないのです。危機管理課や防災課は、ここまで手が回りません。庁内で対策会議を開いても、これらの項目は担当課がないので、上がってきません。
・県庁にも、このような視点で市町村役場を応援することが、これまでなかったのです。

公共施設の被害状況は、比較的早くまとめられます。担当部局があるからです。しかし、個人の家がどの程度被災したかは、すぐには報告されません。これは、ふだんそれを担当している部局がありません。役所の目で見るのと、被災者の目で見るのとでは、すべきことが違って見えます。
また、激甚災害に指定するかどうかが報道されますが、これは公共施設の被害額が算定の基礎になります。極端なことを言えば、家屋がたくさん倒れていても、道路や堤防に被害がないと激甚災害にはならないのです。