ボストン市民社会の文化人類学2

ボストン市民社会の文化人類学」(渡辺靖著『アフター・アメリカ』)の続きです。P239以下に、「居場所の喪失」が書かれています。

ボストン・ブラーミンとボストン・アイリッシュという2つの集団。彼らの生活を支えていた「居場所」の感覚が、戦後急速に希薄になります。
ブラーミンは、経済的社会的特権地位を低下させることによって。アイリッシュの方は、経済的社会的に上昇することによってです。かつての区切られた地域から出て、他の地域に住むことや、他の社会集団と結婚することが、それを加速します。
それぞれの集団の中で助け合い、他方で他の集団とは交わらずに暮らしていた人たちや家族が、個人主義が進むことで、その結束が崩れていくのです。
「日本は欧米に比べて家族主義(家族の束縛)が強く、個人主義が育っていない」という主張がありますが、個人主義と思われるアメリカでも、結構そうではないのです。

とはいえ、人間は一人で、無色透明な空間に生きているのではないことを、再認識します。