戦国大名と分国法

清水克行著『戦国大名と分国法』(2018年、岩波新書)が面白かったです。
日本史で少し習った、戦国大名がつくった法律=分国法についてです。この本を読んで、概要がわかりました。行政法+刑法+民法+商法のようなものですね。その内容は、本書を読んでいただくとして、もっと興味深かったのは、その定めの効力です。

それまで、制定法としては、律令や御成敗式目がありました。時代の変化と地域の実情に合わせて慣習法ができ、それらも取り込んで「国内法」をつくった意義は大きいでしょう。ところが、有力大名がみんな、分国法を作ったわけではありません。
そして、分国法の内容やなり立ちを見ていくと、大名が「強力な支配権で法令を発布した」のではなさそうです。部下に突き上げられて「協約」として結ばれたもの(マグナカルタのようです)や、部下が言うことを聞かないのでしびれを切らして定めたものもあったようです。
そしてなにより、結城氏、六角氏、今川氏、武田氏のように、その後しばらくして滅びた大名、伊達稙宗のように息子に追放された大名と、決して権力基盤が盤石ではなかったのです。逆に、だからこそ、制定法を作ったのかもしれません。

さらに、これら法令がどこまで守られたか。それも、判然とはしません。文書を見て、「立派なものができた」と考えるのは、早計です。
そのような、ものの見方を教えてくれる名著です。私は、そのような観点から、この本を読みました。