異論の統一、国会の役割

朝日新聞、5月6日の社説は「エネルギー計画 この議論で決めるのか」です。

・・・経済産業省が、今年夏に改定する「エネルギー基本計画」の骨子案を審議会に示した。国内外で逆風が強まる原発と石炭火力発電を基幹電源と位置づけるなど、4年前に決めた現行計画をほぼ踏襲する内容だ・・・
・・・国民の声に耳を傾けるプロセスも軽んじられている。
経産省は、ネットなどで受け付ける「意見箱」を設けた。原発の賛否は分かれ、再エネは大幅拡大を求める声が目立つが、そのまま印字した分厚い紙を審議会に配るだけで、議論の材料になっていない。エネルギー分野のNPOや消費者団体から、国民各層との対話の場を求める声も相次いだが、黙殺された・・・
・・・どんなエネルギーをどれだけ使うのか。望ましい方向に変えるには、個々の消費者や企業に適切な行動を促すことが欠かせないのに、こんなやり方で社会の理解が進むだろうか。
今からでも遅くない。市民やさまざまな団体、幅広い知見を持つ専門家らと意見交換する場を設け、活発な議論につなげるべきだ。重要な政策を鍛え直す機会を逃してはならない・・・

原発については、国民の間で意見が分かれています。今後のエネルギー政策をどうするのか、安定供給、安全、環境保全などの観点で、これが正しい唯一の答というものはないでしょう。しかし、どれかに決めなければならない。その際にどのような手順で決めるか。それは、国会です。国民の間にある異論を集約する機能と責任は、国会にあります。

この社説では、経産省、それも審議会が決めるかのように読めます。
かつて、審議会は、国民の意見を聞く、有識者の意見を聞く、関係者の意見を聞く場として活用されました。しかし、そのお膳立てを官僚がすること、結論もあらかじめ決められているのではないかという批判がありました。「官僚の隠れ蓑」とも言われました。
2001年の省庁改革の際も、官僚主導から政治主導に変える一つとして、審議会の数や役割の見直しをしました(方針は決まっていて、その実施が私の役割でした。「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会、2001年2月号、7月号にまとめておきました)。

エネルギー政策や原発のありようが重要政策なら、経産省や審議会に任せるのではなく、それらの議論も踏まえ、国会で議論すべきことでしょう。
案の提示とその長所短所の説明は、官僚の役割です。しかし、異論がある時に、結論を出すのは、国会です。
国民の声を聞く、国民の声を反映させるのは、審議会ではなく、国会です。