金井利之著『行政学講義』

金井利之著『行政学講義ー日本官僚制を解剖する』(2018年、ちくま新書)を紹介します。
行政学講義と銘打ってありますが、少々変わった行政学講義です。著者自身があとがきで、「多くの教科書とは、かなり異なる構成になっています」と書いています。帯には「支配と権力にさらされる被治者のための教科書」と書かれています。

行政学というより、国民統治の機構と機能、日本の実情についての解説です。通常思い浮かべる国の各省庁と自治体役場の解説ではありません。目次にも、「被治者にとっての行政」「支配と行政」といった項目が並んでいます。
日本の国政を対象とした政治学に近いです。統治の機構としては、構成員として政治(政治家)と行政(事務職、職業公務員)があります。この本では、それらをひっくるめて「行政」としています。私の整理では、政治は権力、行政は政策で象徴できると思います。その点で、この本では政策については詳しくは論じられていません。

また、制度や仕組みの説明ではなく、社会的機能など社会学的な説明が多いです。省庁の内部事情に詳しく、新聞記事には出てくるけど教科書など書物には出てこない話もたくさん書かれています。
日本が実質的にアメリカの自治体であると規定して、様々な見方をするなど、著者独自の見立ても多いです。
初心者より、上級者向けの本と思います。