慶應義塾大学、地方自治論Ⅱ第9回目

今日は、慶應大学で地方自治論Ⅱの第9回目でした。
地方交付税の果たしている機能について、説明しました。あわせて、戦後日本の発展について、政府の政策と効果についても。
1950年代以降、工業化の進展と経済成長にしたがって、太平洋ベルト地帯への人口集中が進み、過疎と過密が進みました。また、商工業と農業との所得格差も。
政府は、産業政策(米の買い支え、工場再配置)と、公共政策(公共事業、国庫補助金、地方交付税による均霑化)を行いました。これによって、地方でも働く場を確保することとともに、全国各地で一定水準のインフラと公共サービスを提供しました。しかし、過疎と過密を解消することはできませんでした。

もっとも、交付税による財源保障と財政調整がなければ、豊かな地域と貧しい地域で、もっと大きな差がついていたでしょう。
中国やアジアの国の政府関係者が、日本の交付税制度の勉強に来られ、説明したことを思い出します。彼らにとっても、切実な課題だったのです。「これらの政策で、どの程度成功したのか」とか「日本は、このほかに人口移動を制限していないのか」という質問もありました。

その後、国際化でこのような産業政策は無理になり、財政の逼迫で公共事業も削減が始まりました。
バブル崩壊とアジアの追い上げで、日本は、産業・経済・社会で新しい局面に入りました。その転機が、1990年~2000年代でした。社会の変化や国際化が、経済と財政に影響を及ぼすこと、そして行政の役割が変わることも、話しました。
教科書に書かれていない話、視野の広い話なので、学生からは「おもしろかった」との評価をもらいました。