坂の上の雲をもじる

講談社のPR誌『本』2014年9月号、平田オリザさんの「下り坂をそろそろと下る」の冒頭は、次のような書き出しで始まります。
・・まことに小さな国が、衰退期を迎えようとしている。その列島のなかの一つの島が四国であり、四国は、讃岐、阿波、土佐、伊予にわかれている。讃岐の首邑は高松・・
お気づきになりましたか。平田さんは続けて、次のように白状しておられます。
・・と、これは、読者諸兄がよくご存じの『坂の上の雲』の冒頭の、できの悪い贋作である・・
う~ん、平田さんにやられましたね。国民的小説とも評され人口に膾炙した『坂の上の雲』をもじった本は、いくつかあります。『坂の下の・・』とか。でも、書き出しをもじるとは。
もっとも、原文は「まことに小さな国が、開花期をむかえようとしている」で、小さな国がその後発展して大きな国を破るので、この文章が成り立ちます。今この文章をもじるなら、「まことに大きく発展した国が、衰退期を迎えようとしている」でないといけません。「まことに小さな国が衰退」しても、小説にはなりません。
そして、もっと楽しい小説にするためにも、「まことに衰退期に入る国が、復興期を迎えようとしている」にしなければなりません。