私たちが陥ってはならないこと

復興本部職員一同、そして各府省の職員も、復旧と復興に向けて、精一杯頑張っています。平常業務の上に、この業務が負荷されています。さらに、これまでにない災害ですから、これまでにない対応が必要です。そして、対応は急がなければなりません。関係職員の努力には、頭が下がります。
ところで、職員が精一杯頑張ることと、現地の期待に応えることとの間には、ずれが生じることがあります。せっかく頑張っているのに、地元では評価されない、成果が出ないことがあるのです。この点について、私が、気をつけなければならないと考えていることは、次のようなものです。

まず、入力(input)と成果(out put,out come)の違いです。私たち官僚は、「予算を作りました」「新しい制度をつくりました」と胸を張ります。しかし、その制度が現場で使われてこそ、意味があるのです。せっかく作った制度が理解されていないことや、知られていないことすらあります。また、せっかく作った補助金が、市町村まで届いていないこともあります。
今回の災害対応でも、いくつかそのような事例が、報告されました。市町村長さんと話していて「××は都合が悪く、変えてもらわないと、困っているのです」と陳情を受け、「え~、それは既に制度を変えましたよ」といった場面があるのです。政治家の方からも、「あの点を、どうにかしてやってくれ」という話が持ち込まれ、調べると既に改正していたとか。

新しい制度をつくった場合や、運用を変えた場合には、通達を作って、県庁経由で市町村役場に伝達します。これが通常の行政過程です。しかし、災害時は県庁の担当者も忙しい、市町村役場ではそれどころではない。しかも、避難所対策や、がれき処理などは、平常時は担当者もいなかったり、いても少ないのです。例えば、がれき処理の補助金は、これまで廃棄物処理に関する補助制度はなかったので、市町村のがれき担当職員は、補助金申請そのものが初めてのことでした。

今回は、そのような指摘を受けて、各省の担当職員がチームをつくって、市町村にまで行って、制度改正や運用改正の説明会をしました。補助金交付については、申請書の書き方も、助言しました。
現地での説明会に行くと、私たちのつくった制度がどの程度理解されているか、どこが使い勝手が悪いか、どの補助制度が喜ばれているかが分かります。すると、次の改善につながるのです。

予算というインプットの量が、必ずしも成果(アウトカム)を表さないことについては、『新地方自治入門』第9章で解説しました。

反省と注意その1
いくら新しい制度や補助金を作っても、現場で使われなかったら意味がない。使ってもらって、なんぼ。