縦割りは悪くない

よく、「役所の縦割りはダメだ」と、批判されます。復興に際しても、「一か所ですべてが片付くように、縦割りを無くして欲しい」という意見を頂きます。
しかし、ちょっと、待ってください。組織の縦割りは、悪いことではありません。少し大きな組織になると、必ずその中が、専門分化します。「官僚制(機構)の縦割り」です。経営学の教科書にも、必ず載っています。それは、役所だけでなく、民間企業も、NPOもです。
市町村役場も、県庁も、みんなその中は、縦割りです。医療担当と道路担当は、間違いなく別組織になっています。それを縦割りでなく、一つの組織や一人の職員が担当している例があれば、教えてください。一人の人がすべてに通暁できれば、それは素晴らしいことでしょう。しかし、道路建設も医療保険もすべて分かる人は、そうざらにいません。あらゆる市民のすべての悩みを、それぞれの職員が誰でもお答えする。そんなことをしたら、大混乱になるでしょう。道路には道路の専門家がいて、医療には医療の専門家がいるのです。
新聞社でも、スポーツ担当と政治担当が同じ部門で、一人の記者が担当しているような例があれば、教えてください。

官僚機構の縦割り自体は、悪いことではありません。では、なぜ批判されるのか。批判を受けるのは、相談に行った場合にたらい回しにされることと、担当者がいなくて縦割りの間に落ちてしまうことです。それを防ぐには、すべての課題を受け付ける「窓口」を作ること。そして、そこが責任を持って、担当部局につなぎ、きちんと返事を出すことです。担当部局がないなら、作るか自ら回答することです。
復興本部も、復興に関する相談は、すべて受け付けています。ただし、道路に関することは国土交通省に、医療に関することは厚生労働省に、それぞれ連絡して、そこで解決してもらいます。もし復興本部ですべてを解決しようとしたら、それらの部局と専門家をそろえなければなりません。霞ヶ関が、もう一つ必要になります。もちろん、各府省にお願いするだけでなく、復興本部自体が行わなければならない仕事も、たくさんあります。