時代の雰囲気と歌

日経新聞は文化欄で、第2次世界大戦と敗戦を知る作家たちに、大震災について語ってもらう連載をしていました。その締めとして、8月6日朝刊に、宮川匡司編集委員が「求められる時代の歌」を書いておられます。
・・戦争を肌で知る作家・詩人の声を聞き、ある共通点に気がついた。どの人も現在の日本に、大きな不安や暗さを感じている。あの時代より暗いと感じるのは、なぜなのか。
1950年代から80年代まで、日本は右肩上がりの時代を生きてきた。しかし、バブル崩壊からリーマン・ショックへと至る時代の閉塞感は、一通りではない。この大震災は、その果てに起きた。戦中戦後を生きてきた方々の憂慮のわけは、そこにある。
財政の破綻、原発事故対策の遅れ・・・。嘆くべき材料を数え上げたらきりがない。ただし、日本人は政治・経済・科学技術の方策だけで混乱を乗り切ったわけではない。
かつて焼け跡には「リンゴの歌」が流れていた・・「青い山脈」もまた、そんな歌の一つ。「古い上着よ さようなら/さみしい夢よ さようなら」。暗い戦争の記憶を振り払うようなこの歌は、戦後を生きる人々を、どれだけ鼓舞したことだろう・・
不安が絶えない今だからこそ、人々が心を寄せる「時代の歌」がいる・・