三位一体改革41

13日の読売新聞「論点」に、松沢神奈川県知事が「三位一体改革、着実な達成へ推進法が必要」を書いておられました。(1月13日)
15日の読売新聞「50年目の自民党」は、「分権阻む族の構造」でした。「三位一体改革は、政府・自民党が長年築き上げてきた補助金による地方支配という構造を、根底から揺るがせた」「分権は、中央省庁だけでなく、自民党の政権党としての統治のあり方も変えることになる。・・だからこそ、三位一体改革への抵抗が激しかったのだ」「・・もう後戻りすることはない・・」
私が述べている「三位一体改革は行政改革でなく、政治改革だ」を、政治から書いていただいた論文だと思います。(1月17日)
19日の読売新聞は、塩谷祐一記者の「国にもの申す!力増す知事会」を載せていました。「三位一体改革を機に、地方分権のけん引役として存在感を増している・・・」(1月19日)
20日の読売新聞は解説欄で、青山彰久記者が「全国知事会の力、分権改革へ責任ある政策提案が必要」を主張しておられました。賛成です。思うのですが、こういう記事を、なぜインターネットで読めないのですかねえ。それでも、署名入りの記事は、良いですね。責任がはっきりして。(1月20日)
21日の小泉総理の施政方針演説(21日夕刊各紙にも載っています)で、三位一体改革は、郵政民営化に次いで大きく扱われていました。「『官から民へ』『国から地方へ』の実践」の項目の中でです。(1月23日)
24日の日本経済新聞には、中西晴史編集委員の「闘う知事会支える改革派。サロン的会議、一変させる」が載っていました。
三位一体改革をここまで進めた力は、小泉総理、片山・麻生総務大臣ですが、もう一つは知事会です。そして、この後、三位一体改革の残りと、パート2を進められるかは、知事会など地方団体の力量にかかっています。
待っていても進まない、それどころか、総理に言われて案を出しても進まないことは、昨秋よく見えたはずです。次々と仕掛けていかないと、この改革は進みません。守旧派は、先送りやうやうむやを狙っているのですから。
去年は、補助金廃止に対し一般財源化が少なかったこと、交付税などが大幅に削減されたことから、地方団体が猛反発しました。結果として、その不満が改革を進めました。今年は、交付税総額も減らず、地方団体には安堵感が見えます。すると改革は進まないおそれがあります。(1月25日)
26日の読売新聞「論点」には、梶原拓知事会長の「地方分権改革、住民参加の満足型社会に」が載っていました。「これまでの三位一体改革で、地方は1兆円余りの国庫補助金削減と3兆円弱の交付税削減を受け入れ、国の財政健全化に多大な協力をしてきた。新年度の地方財政計画で職員数も1万2千人純減する。これに対して国は、新年度予算でわずか624人の職員しか純減させない」「財務省は歳出削減を声高に叫ぶが、国が自らの身を削るスリム化の実績は、まことに寂しいものがある」「地方分権は真の構造改革、究極の財政再建策である」(1月26日)
(住民の監視)
三位一体改革が進むと、地方団体の自由度が高まるとともに、責任も増えます。「国が監視しなくて大丈夫か?」という質問を受けます。国の後見をやめ、地方が責任を持つというのが分権ですから、この質問は意味がありません。
市長さんの能力によって、地域間に格差が出るでしょう。競争が生まれることで、よりよい地域ができるのです。市民は隣の町と比較して「あっちの方が税金が安くてサービスもいい」と、我が市長を評価するのです。
もう一つ、興味深いことを紹介しておきます。サラリーマンの方は毎月給料日に、給料と一緒に給与費明細書を渡されるでしょう。そこには、給料明細の他に天引きされた税金や年金保険料が書かれています。天引きされる税金は、国税の所得税と地方税の住民税です。
今は多くの人にとって、所得税額の方が住民税額より大きいです。納税者のうち1~2割だけが、住民税の方が高いと推計されています(ただし、所得税はボーナスからも徴収しているのに対し、住民税は月給からだけ徴収しているので、年額が同じでも、月給からの徴収は住民税の方が多い場合もあります)。
今度、税源移譲が実現し、住民税が10%定率になると、納税者の8~9割の人が、住民税額の方が所得税額より大きくなると予想されます。毎月、給与費明細書を見るたびに、地方税負担の大きさが「実感」できるようになるのです。これまでなら、「税金が重い」とか「行政サービスが悪い」と思ったときに、小泉総理の顔を浮かべていた人たちが、市長の顔を思い浮かべるようになるのです。
私は、この効果は、住民に地方自治の意義を100回解説するより、効果があると思っています。(1月27日)
この点について、「どうしてですか?」と質問がありました。確かに、税率の折れ線グラフを見ただけでは、ピンとこないですよね。
現状では、住民税額の方が所得税額より大きい人が少ないことは、折れ線グラフでもわかります。どの所得段階でも、所得税率の方が、住民税率より高いか同じなのですから。住民税額の方が多いのは、①所得が少なく住民税が5%かかって所得税がかからない人と、②所得税は10%・住民税は5%かかるが住民税額の方が多い人です。②は所得税の方が課税最低限が高いので、こんなことが起こります(絵を描くか数字で示さないとわかりにくいのですが、ここでは省略します)。
改正後では、③年間給与収入が約600万円までの人(4人家族のモデル試算)は、住民税が10%、所得税が5%かかります。この人たちは、住民税額の方が大きくなります。
次に、600万円を超える人たちには、住民税率は同じく10%ですが、所得税はそれを超える収入につき順次10,20,23%と高い税率がかかります。しかし、この率は限界税率=低い部分は5%、その次の部分に10%がかかる仕組みです。
④例えば収入700万円の人は、限界税率は住民税・所得税ともに10%ですが、納税額は住民税の方が多くなります。この人には、所得税は600万円以下の収入には5%しかかからず(住民税は10%)、600~700万円部分だけ10%かかるからです。それで、所得税率(限界税率)が20%でも、住民税額の方が大きい人も出てきます。
⑤所得税額の方が住民税額より大きくなるのは、収入約900万円以上の人と試算されます。そして納税者の数は、900万円以下が圧倒的に多い(8~9割)のです。(1月29日)