三位一体改革18

【公共事業などの一般財源化】
今日は、公共事業などの一般財源化について解説しましょう。財務省の反対論は「国はその財源を建設国債で賄っており、税源移譲をする財源はない」です。これには、次のような反論があります。
①国債は財源ではない。
国債はその年度で見れば財源ですが、長期的には財源ではありません。翌年からは、返済が始まります。その財源は国税です。
毎年、6兆円の建設事業をし、その財源は国債だとします。国債は60年返済ですから、毎年1千億円ずつ返済します。その財源は国税です。これが60年続くと、毎年6兆円国債を発行して、6兆円返済し、その財源は国税です。国債は「真の財源」ではなく、国税の前借りです。
財務省の論理で言えば、「これまでに発行した国債の返済は国税で、これから地方が行う建設事業の財源は地方が負担する」になります。地方が行う建設事業をひとまず地方債とするとしても、長期的には地方税が必要なのです。一方、建設事業の補助金がなくなった分だけ、国は国債が減りそのための国税も不要になります。その不要になった分が地方に移譲されるのです。
国債が入っているのでわかりにくいですが(財務省の議論が成り立つかのように見えますが)、長期的に考えれば、また国債は財源でなく税金で返済しなければならないことを考えれば、経常的経費と変わりはありません(時間差があるということです)。
②建設国債が赤字国債に振り代わるだけ
財務省の主張は、「建設事業補助金の財源は建設国債である。補助金を削減し、それに見合う金額の国税を地方に移譲すると、国は国税は減り建設地方債も発行できないので、予算が組めない」ということです。
これも、そんなに説得力のある反論ではありません。
その場合は、不足分は赤字国債が発行されます。即ち、建設事業補助金が1兆円削減され、地方に1兆円国税が移譲されるとします。補助金歳出が1兆円なくなるので、その財源である建設国債も1兆円不要となります。
1兆円建設国債が発行されないとなると、他の条件が変わらなければ、赤字国債が1兆円増えます(今年だと、建設国債が6兆円から5兆円になり、赤字国債が30兆円から31兆円になります)。それは、過去の国債の償還財源分なのです。
国債としては、総額36兆円は変わりません。そして国債には、色は付いていないのです。
おわかりになるでしょう。この問題は、異常に国債に依存しているところに原因があるのです。昭和40年まで、戦後日本は国債を発行していませんでした。その状態で建設事業補助金を廃止し、地方に税源移譲することを考えれば、そんなには難しくありません。
その例が、道路建設補助金です。これは、道路特定財源(ガソリン税など)で賄われています。国債が入っていないので、補助金廃止=税源移譲なのです。(8月29日)
【国政変えるか47士】
29日の毎日新聞には、川勝平太国際日本文化研究センター教授が主張「時代の風」で「国政変えるか47士」を書いておられました。「国政の根幹に触れる案件において、これほど知事の存在感を示した例はなかっただろう。」「これは明治維新の廃藩置県以来、中央政府に従属してきた知事が、国の形を変える主体に上昇転化したという意味で画期的な1ページを開いたと考えられる。」
「小泉首相は知事会への丸投げで、結果的に、地域分権の真の主体がどこにあるかを国民の前に知らしめた。」(8月30日)
【無駄な補助金、廃止はさせない?】
経済財政諮問会議では、三位一体改革の議論が続けられています。その中で財務省が、「三兆円の補助金廃止・税源移譲について、事業を洗い直して無駄なものは税源移譲をしない」旨のことを発言しておられます。
何度も聞くセリフですが、私にはどうしても理解ができません。無駄な事業(補助金)なら、予算査定で削減すればいいのです。その査定権を持っているのは、財務省です。なんで、そんな無駄な補助金をつけているのでしょうか。
他の省の問題点を指摘するならわかりますが、自らやった仕事の問題をこのように指摘するとは。まずは、そんな補助金をつけた部下(主計官)の責任を問うべきでしょう。財務大臣は、誰に向かってこのセリフをおっしゃっているんでしょうかね?理解しがたいですね。
今日(2日)の記者会見でも、香山総務事務次官が同様の疑問を呈しておられます。
また、今日の「官庁速報」(時事通信社)によれば、財務省は「なぜ補助金を廃止するのかを、地方からも説明してもらう必要がある」と言っているそうです。前に一度取り上げたことがあります。このセリフを理解できる人は、少ないでしょう。
予算査定は、「なぜ必要か説明してもらう必要がある」はずです。県庁や市役所の財政課員はそうしていると思います。それに対し、財務省は補助金を削減する(予算を削る)つもりはないのということです。それは、自らの権限縮小につながるからでしょうか。
2日の毎日新聞は石弘光政府税制調査会長、梶原拓全国知事会長、諸井虔地方制度調査会長の鼎談「地方分権の行方を問う」「税源移譲進めて官僚政治打破を」を載せていました。(9月2日)